症例
経皮的心肺補助の使用により重度障害なく救命しえた大腿骨骨折後肺動脈血栓塞栓症の1例
島崎 紘史郎
1
,
河野 衛
,
中川 将吾
,
田中 ハルカ
,
上杉 雅文
1茨城西南医療センター病院 整形外科
キーワード:
X線診断
,
血栓塞栓症
,
心電図
,
大腿骨骨折
,
肺塞栓症
,
補助循環
Keyword:
Assisted Circulation
,
Femoral Fractures
,
Electrocardiography
,
Pulmonary Embolism
,
Radiography
,
Thromboembolism
pp.225-228
発行日 2017年2月1日
Published Date 2017/2/1
DOI https://doi.org/10.18888/J00767.2017180898
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症例は81歳女性で、歩行中に自動車と接触し救急搬送された。受診時、右大腿部に腫脹、変形、疼痛を認めた。単純X線像で右大腿骨遠位部骨幹部に斜骨折を認め、同日腰椎麻酔下に逆行性髄内釘による内固定を行った。術翌日から患肢免荷で離床を開始した。術後9日目より歩行練習を開始したが、術後13日目、一過性意識消失と血圧低下を認めた。補液と酸素投与のみで改善したため、経過観察したが、同日午後に頻呼吸、意識消失、全身性痙攣、呼吸数36回/分、脈拍107回/分、血圧76/49mmHg、SpO2は測定不能となった。動脈血ガスはpH7.095と高度アシデミアを呈し、血液検査ではD-ダイマー28.0μg/mlと高値であった。胸部単純X線では右第2弓の突出と両肺動脈拡張による右心負荷の所見を示し、心電図はSIQIIITIIIパターンであった。下肢造影CTでは右側膝窩静脈、左側大腿~膝窩静脈に連続する血栓を認めた。胸部造影CTでは両主肺動脈、肺動脈幹に及ぶ血栓を認め、大腿骨骨折後肺動脈血栓塞栓症(APTE)と診断した。CT直後に呼吸停止となり、気道確保・呼吸管理のため気管挿管を、循環管理のため、PCPS導入を行った。その後、バイタルサインは安定し、痙攣の再発なく経過した。同日緊急手術となり、人工心肺使用下で肺動脈血栓摘除術が行われた。術後、PCPSを抜去し、ICUへ挿管帰室となった。術翌日に抜管、術後11日目より離床を再開し、術後38日目に独歩で転院となった。現在、機能障害なく経過している。
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