連載 話したくなる 整形外科 人物・用語ものがたり
第18回
「やらねば10日で死ぬ!?顎関節脱臼とヒポクラテス法:オリジナルはヘロディコス」
小橋 由紋子
1
1日本大学医学部附属板橋病院放射線科
pp.100-101
発行日 2024年1月19日
Published Date 2024/1/19
DOI https://doi.org/10.18885/JJS.0000001654
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エジプトの記録媒体であるパピルスでは「医学パピルス」とよばれるものがある。さまざまなものがあり,婦人科疾患を中心に記載しているKahun gynecological papyrus,内科,精神疾患,歯科疾患を記述したEbers papyrus,外科疾患を扱ったEdwin smith papyrusなどがある。Edwin smith papyrusは古代エジプト(紀元前17世紀)に書かれたものである。紀元後20世紀に翻訳されて出版されている。このパピルスは数百年の間,追記に追記された注釈が認められ,症例報告を含んでいる。具体的には頭部外傷から始まり,咽頭,脊椎と記載され,残念ながらそこで終了となっているらしい。整形外科疾患である脊椎の症例は6例含まれている。このなかで下顎骨脱臼の記載もある。「まず患者を診て,口が開き閉じない状態を確認し“あなたの顎は外れている。私は治すことができます”と伝え,彼(患者)のオトガイ下に手を置き後退させ顎を元の位置に戻す」,実のところ現代の治療と変わりはない。古代インド医学のパイオニア,Sushruta Samhita(スシュルタ・サンヒター)も下顎脱臼に触れており,「大声の会話や硬い食べ物を噛む,欠伸で悪化する」と記載している。
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