静脈吻合しない指尖部切断再接着術の限界レベル

Hara T et al. Limiting levels of fingertip replantation without venous anastomosis

【要　旨】

　目　的：指尖部切断再接着術において，静脈が細く吻合困難なことがある．本研究の目的は指尖部切断再接着術における，静脈吻合の有無による術後成績を比較・検討することである．

　対象および方法：2003～2020年に施行した指尖部切断再接着術（石川分類subzone Ⅰ～Ⅳ）132例148指を検討の対象とし，静脈吻合を施行した64指と施行していない84指に分けて比較した．静脈吻合が不可能な場合，当院では術後5日間，指尖部より瀉血を施行してうっ血を回避している．

　結　果：全体の生着率は90.5％であった．石川分類別の生着率ではsubzone Ⅰ～Ⅲにおいて静脈吻合の有無で有意差はなかったが，subzone Ⅳにおいて静脈吻合あり94.3％（33/35指）に対して，静脈吻合なし62.5％（10/16指）と有意に生着率が低かった（p＜0.05）．ヘモグロビン（Hb）値や輸血の有無に関して両群間に有意差はなかった．

　結　論：静脈吻合しない指尖部切断再接着術の限界レベルはsubzone Ⅲまでであると考えた．また，指尖部から瀉血しうっ血を回避する方法は比較的安全であると考えた．