誌説
仙腸関節障害をご存知ですか?
兼氏 歩
1
1金沢医科大学整形外科教授
pp.1178-1178
発行日 2025年11月1日
Published Date 2025/11/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei76_1178
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仙腸関節とは文字通り仙骨と腸骨の間にある関節です.腰は月へんに要と書きますが,同じくらい重要な,体幹と下肢をつなぐ二足歩行においてなくてはならない関節です.しかし,現在の整形外科の教科書では記載がほとんどなく,一部に解剖や疾患名があるくらいです.仙腸関節は靱帯結合で安定しており,靱帯を外しても可動域は少ないため,ほとんど動きがない半関節という分類になります.一方,わずかに動くことや靱帯成分に脂肪などが混ざりクッションやダンパー効果をもたらす衝撃緩衝作用を有する重要な部位になります.また,出産時には恥骨結合と同時に動きが与えられ,自然分娩を行いやすくしています.しかし,靱帯による安定性が出産後に損なわれると不安定性が残存し,腰痛や歩行障害の原因になることがあります.一般的には不意の外力や繰り返しの衝撃による仙腸関節の不適合によって生じる機能障害を仙腸関節障害といいますが,病態としてはさまざまな誘因による仙腸関節のわずかなずれや周囲組織の過緊張,緊張不足が生じることで症状が発現します.論文によると,軽症例も含め全腰痛患者の15~30%と報告されています.このように高頻度で遭遇する疾患であるはずですが,臨床現場ではほとんどその診断はついていないと思われます.
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