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は じ め に
高齢者の寝たきり率の増加は先進国の医学的,社会経済的問題となっている1).この問題の原因として加齢による骨格筋の減少と骨粗鬆症性骨折があげられる2,3).骨格筋量は40歳をすぎると毎年約1%減少すると報告されている4).またサルコペニアは進行性の加齢に伴う骨格筋量と筋力の低下として定義され,日常生活動作の低下,生活の質の低下,死亡などの有害なアウトカムに関連している5).European Working Group on Sarcopenia in Older People(EWGSOP)は,サルコペニアの診断に二重エネルギーX線吸収法(DXA)または生体電気インピーダンス分析(BIA)を使用し骨格筋指数を評価することを推奨している.一方,骨格筋量評価およびサルコペニアの診断にはCTの使用が有用であるとされ6),CTベースのアプローチの一つであるL3椎体レベルでの骨格筋の総断面積を身長の二乗で除して求められる骨格筋指数は全身の骨格筋量と相関があることが報告されている7).また最近の研究で,大腰筋指数(PMI)がより簡便な骨格筋量評価の方法として報告されている.これはL3椎体レベルでの左右の大腰筋面積の和を身長の二乗で除して測定される骨格筋指数であり,総骨格筋量と正の相関があり,サルコペニアの診断に有用であるとされている8).
骨粗鬆症は50歳以降の骨折の主要な原因の一つで,重篤で複雑な併存疾患を引き起こす可能性があり,骨量の減少,骨組織劣化,骨強度低下を特徴とする3).骨粗鬆症の診断は主に骨塩量(BMD)に基づいて行う.BMDはDXAによって測定される単位面積当たりの骨に存在するミネラル成分の量であり,低BMDは骨強度の低下と脆弱性の増加による骨粗鬆症と骨折リスクの増加と相関している9).世界保健機関(WHO)の基準によると,骨粗鬆症はTスコア(若年者の平均BMD標準値が0で標準偏差が1の指標)が−2.5以下の場合に診断される.骨折リスク評価ツール(FRAX)は,10年以内の骨粗鬆症性骨折および股関節骨折のリスクを予測するための国固有のアルゴリズムであり,2008年にWHOによって開発された10).骨粗鬆症性骨折のリスクが15%以上の場合は予防的治療を開始することが推奨されている11).
近年DXAおよびBIAによって測定された骨格筋指数がBMDと正の相関関係があることが示されている12).しかしながらCTで計測された骨格筋量とBMD,骨折リスクとの関連は明らかとなっていない.本研究の目的は,PMIとBMD,FRAXによって推定された骨折リスクとの相関を検討することである.
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