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- 文献概要
われわれ整形外科医を含め,何科の医師であったとしても,必ず手に取って読んだことがあるであろう『今日の治療薬』の2022年版が発売された.1977年に初版が刊行され,今版は改訂第44版となる.われわれは大学医学部での教育課程においては,それぞれの疾患に対する具体的な薬剤の使用方法などについての教育はほとんど受けることはない.よって,医師免許を取得後,医師として働き始めた当初は,薬の名前やその効能などについてほとんど知識がない.このため,たとえば痛みを訴える患者に対して鎮痛薬を処方する際にも,さまざまな効能,効用をもった鎮痛薬のうちどれを選択するべきか,判断に迷うこともある.そのような場面では,周りの医師や薬剤師に相談すると同時に,本書をめくってそれぞれの薬剤について一つ一つ調べた記憶がある.その後,整形外科医として自分が頻用する薬剤については自然と知識が身につくが,普段あまり使用しない薬剤については覚えることがむずかしい.事実,すでに医師として25年間仕事をしてきているが,現在でも本書にお世話になることはしばしばある.特に,自分が何か処方しようとした際に,患者が日ごろから内服している薬剤との相互作用(併用注意)に関する確認には必須である.近年では,診察室のコンピュータ画面でも薬剤の添付文書を確認することはできる.しかしながら,外来の忙しい合間に添付文書すべてを見直すのは時間がかかり,コンパクトに必要な情報がまとめられている本書の存在はたいへんありがたい.さらに,近年では後発品が増えたことにより,以前は商品名で記憶し使用していた薬剤を一般名で使うようになったが,若いころから慣れ親しんだ商品名からの転換が容易でないことも多い.このように,薬剤に関する小さな疑問や調べたいことがある際に,手元にあるとたいへん便利な本である.
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