連載 整形外科医が知っておきたい他科の知識
下肢静脈瘤
-――診断と治療
武内 謙輔
1
1たけうち静脈瘤クリニック血管外科・内科
キーワード:
varicose vein
,
deep vein thrombosis
,
edema
Keyword:
varicose vein
,
deep vein thrombosis
,
edema
pp.1072-1076
発行日 2022年9月1日
Published Date 2022/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei73_1072
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はじめに
静脈は血液の70%が貯留され,下腿筋肉内静脈は洞構造をとり,血液を一過性にプールする「第二の心臓」としての機能をもつ.下腿の筋肉や静脈そのもののポンプ作用により血液を心臓に向けて還流させるわけであるが,静脈に備わる弁の機能がさまざまな要因で低下すると下肢の静脈に血流うっ滞が生じ,肉眼的に静脈が膨らんでくると下肢静脈瘤,血管内で固まると深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:DVT)を引き起こす.整形外科では股関節や膝関節の人工関節置換術周術期に高率にDVTを発症するが1),下肢静脈瘤を併発している場合は下肢静脈瘤の治療をさきに行うことで整形外科術後DVTのリスクを50%低下させることができる2).脳梗塞や脳出血発症後のリハビリテーションを目的に入院中の201例で下肢静脈エコーを施行したところ約30%にDVTを認めた.このような症例では下肢の筋力低下がみられ,サルコペニアの状態で筋力低下や活動力低下により血流の停滞が起こり血栓を形成したものと考えられた.
下肢静脈瘤の治療は10年前まで主流であった静脈抜去術(ストリッピング術)ではなく,カテーテルを用いた血管内治療でほとんどの場合において治療可能である.基本的には局所麻酔で治療可能で,静脈麻酔を併用する場合もあるが治療時間はわずか30分程度である.本稿では下肢静脈瘤の最新の治療について解説する.
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