中下位頚椎術後の嚥下障害発生に関する前向き研究

A prospective cohort study of dysphagia after subaxial cervical spine surgery

【要　旨】

　目　的：中下位頚椎術後の嚥下障害を検討すること．

　対象および方法：2015～2017年に当院で中下位頚椎変性疾患に対して手術を行った全例に対し，Bazaz dysphagiaスコアによる自記式アンケートを術前・術後6ヵ月・1年の時点で行い，嚥下障害を評価した．1年経過観察可能でデータの完備した191例を調査対象とした（男性132例，女性59例，手術時平均年齢64.9歳）．術式は，前方除圧固定術（ADF）87例，後方除圧固定術（PDF）21例，椎弓形成術（LAMP）83例であった．併せて，疾患，手術椎間レベル，手術椎間数，C2～C7前弯角（CL），O-C2角（OC2A），C2～C7可動域（ROM），日本整形外科学会頚髄症治療成績判定基準（C-JOAスコア），頚部痛visual analogue scale（VAS）を調査した．

　結　果：術前から32例（16.8％）に嚥下障害を認めた．術後の新規嚥下障害（Bazaz dysphagiaスコアが術前より1段階以上悪化と定義）は，術後6ヵ月で38例（19.9％），1年で32例（16.8％）であった．術式別では，術後6ヵ月でADF 32.1％，PDF 23.8％，LAMP 6.0％，1年でADF 25.3％，PDF 23.8％，LAMP 6.0％であった．術後1年での新規嚥下障害の危険因子は，固定術（ADFかPDF）と術後CL増加で，術後CL増加のカットオフ値は5°であった．

　結　論：中下位頚椎術後の嚥下障害発症の危険因子は，固定術と術後の前弯増加であった．前方だけでなく後方固定術でもアライメント変化は嚥下障害を引き起こす可能性がある．