Japanese
English
症例報告
頸椎後方除圧固定術後7日以上経過後,アスピリン再開直後に硬膜外血腫を生じた2例
Two Cases of Epidural Hematoma Immediately after Resumption of Low Dose Aspirin More than 7 Days after Posterior Cervical Decompression and Fusion Surgery
熊谷 直利
1,2
,
金山 修一
2
,
鷲見 正敏
2
,
笠原 孝一
2
,
金村 在哲
2
,
平田 裕亮
2
Naotoshi KUMAGAI
1,2
,
Shuichi KANEYAMA
2
,
Masatoshi SUMI
2
,
Koichi KASAHARA
2
,
Aritetsu KANEMURA
2
,
Hiroaki HIRATA
2
1兵庫県立加古川医療センター整形外科
2独立行政法人労働者健康安全機構神戸労災病院整形外科
1Department of Orthopeadic Surgery, Hyogo Prefectural Kakogawa Medical Center
キーワード:
頸椎手術
,
cervical spine surgery
,
術後硬膜外血種
,
Postoperative epidural hematoma
,
アスピリン
,
aspirin
Keyword:
頸椎手術
,
cervical spine surgery
,
術後硬膜外血種
,
Postoperative epidural hematoma
,
アスピリン
,
aspirin
pp.807-812
発行日 2020年8月25日
Published Date 2020/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5002201480
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
今日,虚血性心疾患や虚血性脳血管障害の治療に抗血小板薬や抗凝固薬を用いる抗血栓療法が広く行われている.種々の外科手術において周術期出血リスクを考慮し術前からの休薬が推奨されるが,特に術後硬膜外血腫などの重篤な神経合併症が懸念される脊椎分野に関しては,その取り扱いに十分留意が必要である.「脳卒中治療ガイドライン2015(追補2019)」や「循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン2009」では,抗血小板薬および抗凝固薬の検査,手術時の休薬期間に言及しているが,術後の抗血小板療法・抗凝固療法の再開時期に関しては決まった見解はなく,休薬による血栓塞栓症のリスクと再開による出血リスクを考慮し術者の判断により決定される.症候性の脊椎術後硬膜外血腫の発生率は0.1%程度10)とされ頻度はそれほど多くないが,緊急手術が必要となる重大な術後合併症の1つである.その発生には血液凝固異常や抗凝固薬などがリスクファクターとなることが知られているが,抗血小板療法,特にアスピリン単剤では継続下で頸椎手術を行っても症候性硬膜外血腫を伴わなかったとする報告をはじめ4),近年,低用量アスピリン継続下での手術報告が脊椎分野に限らず他分野でも散見される1,7).今回,頸椎後方除圧固定術後7日以上経過してからアスピリンを再開し,直後に硬膜外血腫を生じた2症例を経験したため,文献的考察を踏まえて報告する.
Copyright © 2020, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.