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は じ め に
本項では,臨床試験における研究計画に焦点をあてる.臨床試験における症例数設計として,本項では,統計的仮説検定にもとづく方法を取りあげる.統計的仮説検定では,二者択一の判断を伴うため,結果がいつも正しいという保証はなく,2種類の間違いを犯す可能性がある.本当は差がないのに有意な差があると判断してしまう誤りを第Ⅰ種の過誤(type Ⅰ error),本当は差があるのに有意な差がないと判断してしまう誤りを第Ⅱ種の過誤(type Ⅱ error)と呼ぶ.第Ⅰ種の過誤はあわてものの誤り,第Ⅱ種の過誤はぼんやりものの誤りと呼ばれる.
臨床試験の目標症例数をあらかじめ設定することを,症例数設計あるいはサンプルサイズ設計(sample size calculation)という.ランダム化比較試験(randomized controlled trial:RCT)の報告を改善するために用いられているConsolidated Standards of Reporting Trials(CONSORT)声明によると,臨床試験の計画段階で目標症例数とその設定根拠を記載することが求められている1).臨床試験で症例数設計が求められる理由として,統計的仮説検定を行う場合,第Ⅰ種の過誤は有意水準(significance level)αを設定することで制御できるが,第Ⅱ種の過誤は解析段階で制御することはできず,計画段階で設定した症例数に依存する.そのため,第Ⅱ種の過誤を制御するために適切な症例数を設定する必要がある.ここで,検出力(power)は1から第Ⅱ種の過誤確率を引いた値であり,臨床試験では80%あるいは90%になることを保証できるように症例数設計が行われることが多い.また,臨床試験は人を対象として実施されるため,倫理的・経済的な観点からも,必要以上に多くの参加者を登録することは避けるべきである.さらに,臨床試験にかかる費用は高額であるため,試験実施者にとって大きな負担になってしまう.したがって,臨床試験の計画段階で適切な症例数を統計的に設定することは重要事項であるといえる.
本項では,臨床試験における症例数設計を,統計的に実施するための基本的な考え方を解説する.そして,独立した2群のデータに対して統計的仮説検定を行う場合の症例数設計方法を説明し,症例数に影響を与える要因について解説する.さらに,症例数設計を実施するためのソフトウェアあるいはウェブページについても紹介する.
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