既存の高度脊髄圧迫は外傷性非骨傷性頚髄損傷患者において重度麻痺発生の重大な危険因子である

Preexisting severe cervical spinal cord compression is a significant risk factor for severe paralysis development in patients with traumatic cervical spinal cord injury without bone injury；a retrospective cohort study

【要　旨】

　目　的：既存の高度脊髄圧迫の有無が，外傷による非骨傷性頚髄損傷の麻痺重症度に影響を与えるか否かを調べることである．

　対象および方法：外傷性非骨傷性頚髄損傷患者122例を後ろ向きに調査した．来院時の麻痺重症度をAmerican Spinal Injury Association impairment scale（AIS）で，既存の脊髄圧迫の程度をmaximum spinal cord compression（MSCC）で評価した．脊髄圧迫の程度をMSCCの値により軽度圧迫（MSCC≦20％），中等度圧迫（20％<MSCC≦40％），高度圧迫（40％<MSCC）の三つに分類した．来院時重度麻痺（AIS grade A～C）となる危険因子について多重ロジスティック回帰分析を用いて検討した．

　結　果：男性は103例，研究コホートの平均年齢は65歳であった．来院時重度麻痺を呈した患者は61例であった．MSCCの平均値は22％で，中等度圧迫は41例，高度脊髄圧迫は20例にみられた．多変量解析の結果，高度脊髄圧迫は来院時重度麻痺の有意な危険因子であった．

　結　論：既存の高度脊髄圧迫は，外傷性非骨傷性頚髄損傷患者において重度麻痺発生の有意な危険因子である．