特集 大人医師の復習帳―昔の常識,今でも大丈夫?
第6章 消化管
[大腸がん薬物療法]化学療法の再投与も考えます
浜本 康夫
1
1東京科学大学病院 臨床腫瘍科
pp.765-767
発行日 2026年4月1日
Published Date 2026/4/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_naika137_765
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大腸がん薬物療法の今昔
かつて大腸がん化学療法といえば細胞障害性薬剤,しかも5-FU系抗がん薬しか有効薬剤がない時代が長く,「Best 5-FUレジメン」をめぐる試行錯誤が続いていました.米国ではMayoレジメン,RPMIレジメン,欧州ではde Gramontレジメン,AIOレジメン,夜間投与レジメンなどが競い合い,ロイコボリンによるバイオモジュレーションも盛んでした.本邦では経口抗がん薬(テガフール・ウラシル,ドキシフルリジン,カペシタビン)を中心に汎用され,また5-FU肝動注療法やlow-dose FP療法といった独自の潮流も存在しました.当時の生存期間の中央値は12ヵ月前後というのが限界でした.
しかしオキサリプラチンの登場により状況は一変しました.欧州流のFOLFOXやFOLFIRIが標準治療となり,生存期間の中央値は20ヵ月前後に改善しました.さらに分子標的治療薬と組み合わせた個別化治療も開発され,生存期間中央値は一気に30ヵ月に到達しました.現在ではRAS/BRAF変異,マイロサテライト不安定性(MSI),HER2増幅に加え,詳細な分子遺伝学的な精査によりNTRK融合遺伝子などをクリニカルシーケンスで捉え治療戦略に組み込む時代となりました.大腸の左右差(右側結腸・左側結腸)を別疾患群として扱う発想も一般化し,計画的休薬,維持療法,再投与,局所治療,複数回のゲノム解析を組み合わせる柔軟な治療が重視されています.生存期間の中央値は40ヵ月に迫る結果が報告されており,年単位の予後を提供できる時代になっています1).

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