書評
消化器科医のためのアルコール臓器障害診療マニュアル―減酒療法のススメ
沖田 極
1,2
1山口大学 名誉教授
2日本肝臓学会 元理事長
pp.1279-1279
発行日 2023年6月1日
Published Date 2023/6/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_naika131_1279
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- 文献概要
私が医学部を卒業した1967年当時の肝臓病学といえば,診断学が主体でAST,ALTという逸脱酵素や肝障害の進展を予測する膠質反応の結果をみて,肝生検組織像と対比しながら肝庇護剤の効果に一喜一憂する日々であったような気がする.しかしながら,B型肝炎ウイルス(HBV)やC型肝炎ウイルス(HCV)のウイルス学的診断が可能となるや,多くの肝臓病研究者はウイルス肝炎の診療にシフトしていった.私自身はAFPの研究をきっかけに,肝がんの発生機序の研究に興味をもち,フィラデルフィアの某がん研究所にお世話になったが,その際に驚いたことは街頭にたむろするアルコール中毒者の多さであり,また研究所で剖検されるアルコール性肝硬変患者の肝細胞がん組織が日本人の場合と異なることであった.当時,わが国では故・武内重五郎(金沢大学),故・高田昭(金沢医科大学),故・石井裕正(慶應義塾大学)博士といった方々がこの分野のリーダーだったと記憶している.ウイルス肝炎が肝臓病学の主流になるにつれて,アルコール性肝障害を含む代謝性肝障害の研究者は減少した.
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