特集 意外と知られていない⁉ 自科の常識・他科の非常識
第11章:腎 臓
糖尿病に伴う腎障害にアルブミン尿が顕性化しないものがある
岡田 浩一
1
1埼玉医科大学医学部腎臓内科
キーワード:
糖尿病性腎臓病
,
糖尿病性腎症
,
アルブミン尿
,
レニン-アンジオテンシン系阻害薬
,
集学的治療
,
加齢
Keyword:
糖尿病性腎臓病
,
糖尿病性腎症
,
アルブミン尿
,
レニン-アンジオテンシン系阻害薬
,
集学的治療
,
加齢
pp.716-718
発行日 2021年9月1日
Published Date 2021/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_naika128_716
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糖尿病性腎症から糖尿病性腎臓病へ
1.典型的な糖尿病性腎症の経過と診断
糖尿病性腎症の病期分類は,1型糖尿病による腎症の経過をもとに作成され,正常アルブミン尿である腎症前期(第1期)から微量アルブミン尿を伴う早期腎症期(第2期)を経て,アルブミン尿が顕性化する顕性腎症期(第3期),蛋白尿が増加しつつ糸球体濾過量(glomerular filtration rate:GFR)が低下する腎不全期(第4期)と経過し,腎代替療法の導入とともに透析期(第5期)に到達する.糖尿病性腎症という病名は,もともと特徴的な糸球体病変(糖尿病性糸球体硬化症)で診断される組織診断名であった.しかし患者数の爆発的な増加に伴い,腎生検による組織診断が困難となり,典型的な臨床経過と症候(高度血尿(−),糖尿病網膜症・糖尿病性神経障害の合併など)を伴い,他の腎疾患が強く疑われない場合に診断される臨床診断名となってきた.1型糖尿病と異なり,2型糖尿病では必ずしもこのような典型的な経過をたどらない症例が以前より知られており,アルブミン尿が顕性化しないままGFRが低下したり,糖尿病網膜症が軽微なまま腎症が進展するような非典型例が散見されてきた.しかし,これまでその頻度は高くはなく,例外として取り扱うことで疾患概念や病名を変えるにはいたらなかった.
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