特集 意外と知られていない⁉ 自科の常識・他科の非常識
第10章:内分泌
Basedow病はヨード(無機ヨウ素)で治療することもある
内田 豊義
1
1順天堂大学大学院医学研究科代謝内分泌内科学
キーワード:
Basedow病
,
無機ヨウ素
,
抗甲状腺作用
,
妊娠
Keyword:
Basedow病
,
無機ヨウ素
,
抗甲状腺作用
,
妊娠
pp.687-689
発行日 2021年9月1日
Published Date 2021/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_naika128_687
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Basedow病治療における無機ヨウ素治療の歴史的背景
自然界に存在するミネラルの一つである無機ヨウ素は,Basedow病における治療薬として約150年の歴史を有する治療法である.1868年Trousseau医師が,症状コントロールのため治療薬である「ジゴキシンチンキ」と誤って「ヨードチンキ」を投与し,結果的に臨床的な改善を得た一例を皮切りに,ヨード(無機ヨウ素)は,Basedow病患者において甲状腺ホルモン値の低下を伴う臨床症状の改善効果(抗甲状腺作用)をもたらす内科的な治療薬として使用されていた.一方,Basedow病に対する甲状腺摘出手術は,出血のリスクが非常に高く,予後を左右していた.1929年外科医であるPlummer医師が,無機ヨウ素を術前に大量投与し,手術に伴う出血のリスクを劇的に軽減した一例を報告したことは,現在の慣例的な術前処置となっている.
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