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薬剤耐性菌が世界的に増加する一方,新たな抗菌薬の開発は減少傾向にあり,国際社会でも大きな課題となっている.2015年5月のWorld Health Organization(WHO)の総会では,薬剤耐性(antimicrobial resistance:AMR)に関するグローバル・アクション・プランが採択され,AMRの問題は世界で一致団結して対応すべき課題として一層強く認識されるようになった1).また,グローバル化した昨今は,限られた地域でヒトのAMRの問題だけに目を向けていても十分とはいえない.他国から自国内に簡単に薬剤耐性菌が持ち込まれうるし,さらにはワンヘルスアプローチ(one health approach)と呼ばれる,ヒトのみならず動物や環境におけるAMR対策も含めた捉え方が必要と考えられている.
WHO加盟各国はこのグローバル・アクション・プランに基づき,2年以内に薬剤耐性に関する国家行動計画を策定することを求められた.日本でも2016年4月に,ちょうど同年5月に三重県で開催された第42回先進国首脳会議に先立つタイミングでAMRアクションプランが決定された2).同時期にすでに発表されていた他国のアクションプランと比較すると,日本のアクションプランは各種薬剤耐性菌について2020年までに達成すべき成果指標が数値で示されているという特徴がある.アクションプランに記載されている,抗菌薬の使用量や主たる微生物の薬剤耐性率の国際比較(図1,2),そして日本の達成数値目標(表1)を示す.日本ではセファロスポリン系,マクロライド系,キノロン系など,経口投与可能な抗菌薬の割合が高いことが特徴である.薬剤耐性菌の状況を他国と比較してよいとみるか悪いとみるかは難しいところであるが,成果指標には現実味があり,頑張れば手が届きそうな感じはある.大事なのは,一人当たりの抗菌薬投与量を減らせばよいということではなく,抗菌薬が必要な人には十分な量を投与し,必要ない人には投与しない,というメリハリをもって達成すべき,ということである.
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