特集 新たな時代の大動脈基部置換術
特集「新たな時代の大動脈基部置換術」によせて
小野 稔
1
1東京大学心臓外科
pp.483
発行日 2024年7月1日
Published Date 2024/7/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kyobu77_483
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大動脈基部置換には,人工弁を用いるBentall手術,自己弁温存手術(reimplantation法およびremodeling法),生体組織による基部置換術(ホモグラフト基部置換およびRoss手術)など多数の方法がある.大動脈基部には,Valsalva洞,冠状動脈入口部,大動脈弁が含まれ,それぞれの要素に対してどのような手技を行うのかによってさらに手技のバリエーションが増えてくる.特に冠状動脈入口部の再建手技については,オリジナルBentall手術ではinclusion techniqueが用いられたが,止血が困難なこと,遠隔期における仮性瘤形成が多いことから,その後に多くの再建法が報告されてきた.現在最も多く行われているのは,冠状動脈ボタンをメイン人工血管に吻合するCarrelパッチ法である.Carrelパッチ法は,さらにフェルトストリップ補強を加えるかどうかで二つに分かれる.再手術例や組織が脆弱化した感染性心内膜炎などで冠状動脈ボタンの授動や強度に不安がある症例では,細口径人工血管を間置するCabrol法,Svensson法,Piehler法などが用いられることがある.また,Bentall手術におけるメインの人工血管の基部吻合にも止血と仮性瘤予防を目的とした多くの吻合方法が提案されてきた.特にStanford A型急性大動脈解離や弁輪膿瘍を伴う重症の感染性心内膜炎では,人工血管近位部に弁輪周囲組織へ補強縫合を追加することを目的として,「スカート」を設けて吻合することが多くの報告で推奨されている.
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