書評
『京大式 肝・腎・肺移植マニュアル』
千田 雅之
1
1獨協医科大学呼吸器外科
pp.140
発行日 2024年2月1日
Published Date 2024/2/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kyobu77_140
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「京大式」である.「○○マニュアル」という書名に施設名が入っているのは時折みかけるようになってきたが,臓器移植のマニュアルで施設名をみることは本邦ではまれである.京都大学の矜持の高さを感じる.一方,タイトルに心臓が入っていないことに皆,一瞬戸惑うと思う.これは,京都大学病院が心臓移植に手をあげていないということによるのであるが,これも京都大学が醸し出す校風というか,リベラルというか個人主義の伝統の上にあるものであろうと,歴史にまで感じ入ってしまうのである.通常,地域の拠点大学,いわゆる昔の帝大などでは,全臓器で移植実施施設になろうと院内で体制を組むような働きかけがなされるものであるが,京都大学にはそういうところがない.近くに大阪大学や京都府立医科大学があるので,地域医療における使命をほかの大学ほどは感じずに学問に専念できるからであろうか,京都大学のおかれた特殊な立場に想いを馳せてしまう.タイトルだけでこれだけ妄想をかき立てられる本もないと思う.
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