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どんな薬?
がん薬物療法における白金製剤の開発研究は,1965年にB. Rosenbergらによって白金化合物が大腸菌の分裂阻害作用を有することがわかったことがきっかけでした.最初の白金製剤としてシスプラチンが開発され,現在では固形がんを中心に多くのがん種でキードラッグになっています.しかし,腎機能障害や高度催吐性などの問題があり,シスプラチンの抗腫瘍効果を維持しながら,催吐性や腎機能障害,末梢神経障害などを軽減する目的で,第二世代の白金製剤カルボプラチンが開発されました.カルボプラチンは,腎機能障害のリスクが低いため水分負荷が不要で,シスプラチンよりも悪心・嘔吐や腎機能障害の発現率が低いという利点がある一方で,血小板減少や過敏症などの有害事象があります.カルボプラチンも肺がんや卵巣がん,乳がん,泌尿器がんなどで効果が認められ,現在でも幅広く活用されています.このように白金製剤は多くのがん種において治療に欠かせないキードラッグですが,残念ながらシスプラチンの耐性(治療抵抗性)や,治療継続に影響する腎機能障害,悪心・嘔吐,血小板減少,過敏症などの副作用問題があるのも事実です.これらに対応した次世代白金製剤の開発が望まれ,1970年代に日本人の喜谷喜徳らによってオキサリプラチンが合成されました.その後,フランスの研究者によって臨床開発され,現在ではジェネリック医薬品も発売されています1)(表1)
オキサリプラチンの作用機序はシスプラチンやカルボプラチンと同様に,DNA塩基との架橋形成によるDNAの合成阻害と考えられていますが,ほかの薬に比べて大腸がん細胞株に対して強い抗腫瘍活性を示すことがわかっています.また,オキサリプラチンは単独で使用するよりもフルオロウラシルやレボホリナートなどと併用することで奏効率が高くなる(相乗効果)ことも報告されているため,FOLFOX療法(フルオロウラシル,レボホリナート,オキサリプラチン),CAPOX療法(カペシタビン,オキサリプラチン),FOLFIRINOX療法(フルオロウラシル,レボホリナート,イリノテカン,オキサリプラチン),SOX療法(テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム,オキサリプラチン)など,ほかの抗がん薬と併用して使用します.オキサリプラチンの特徴的な副作用としては,末梢神経障害と輸注関連の過敏症があります.とくに末梢神経障害は用量制限毒性であるため,出現状況によって減量や中止を検討する必要があります.
白金製剤一覧薬 名 日本での承認年 第一世代 シスプラチン 1984年 第二世代 カルボプラチン 1990年 ネダプラチン 1995年 第三世代 オキサリプラチン 2004年 ミリプラチン 2009年
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