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どんな薬?
シタラビンは1950年代にアメリカで開発された抗がん薬で,日本では1971年に急性白血病の治療薬として発売されました.シタラビンは造血器腫瘍で使う薬というイメージが強いですが,実は消化器がんや肺がん,乳がんなどの固形がんでも多剤併用療法で有効性が示されています.また,膀胱腫瘍に対して膀胱内注入での適応もあり,意外にも幅広いがん種に効果を示す薬なのです.また,1980年代になり,海外で治療抵抗性となった再発・難治性急性白血病に対してシタラビンの大量療法が用いられるようになり,有効性が示されたことを受けて2000年に日本でもシタラビン大量療法が承認され,現在も急性白血病のキードラックとして存在しています.
シタラビンはピリミジンヌクレオシド系に分類される代謝拮抗薬です.代謝拮抗薬は,細胞周期のDNA合成期であるS期特異的に作用する抗がん薬で,細胞が分裂・増殖する際に必要な代謝物質(核酸の材料)に類似した化学構造をもち,がん細胞が正常な代謝物質と間違えて取り込むことで,細胞増殖に必要なDNA合成を阻害します.シタラビンは,ピリミジン塩基と同じ様な構造をもち,DNA合成の過程でピリミジン塩基の代わりに取り込まれることによって抗腫瘍効果をあらわします.
シタラビンは通常投与量で用いる場合と大量療法として用いる場合があり,医療事故防止対策のために販売名の変更などの工夫がされています.大量療法で使用するシタラビン製剤は「キロサイド®N」と命名されており,「N」は製造販売元である日本新薬の新製品の意味でキロサイド®注との区別のために付けたとされています.またシタラビンのほとんどはアンプル製剤ですが,大量療法時の使用上の利便性を向上させる目的でキロサイド®N 1 gはバイアル製剤になっています.シタラビンは通常の用法では,0.2~1.6 mg/kgを点滴で投与しますが,大量療法の場合はこれを2~3 g/m2まで増量して使用するため,副作用の出現状況も異なります.
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