特集 女性のがん ~治療とケアの最前線~
治療の最前線
転移再発乳がんの最新治療 ~薬物療法~
酒井 瞳
1
SAKAI Hitomi
1
1昭和大学先端がん治療研究所
pp.565-570
発行日 2022年7月1日
Published Date 2022/7/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango27_565
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はじめに
乳がんの再発形式は,局所再発,領域再発,および全身転移に分類される.本稿では,局所再発および領域再発を除いた全身転移のある乳がん(以後,転移再発乳がん)の薬物療法の概要を解説する.転移再発乳がんの薬物療法は治療の進歩が著しく,標準治療が目まぐるしく変遷しているため,常に新しい情報を参考にしてほしい.
転移再発乳がんは,今なお根治は困難であり,患者の治療の目標は,「腫瘍をコントロールして延命をはかること」「クオリティ・オブ・ライフ(QOL)を維持すること」の2点に集約される.ケモホリデーと呼ばれる治療の休み期間をはさむことはあるものの,原則として,治療は生涯に渡って続く.その治療は基本的には外来で行われ,患者の多くは,仕事,家事,育児,趣味などそれぞれの日常生活を行いながら治療している.仕事ひとつをとっても,治療の副作用による仕事への影響,職場の人間関係(病気について話をするか),望まない退職による収入減少など,人によりさまざまな課題がある.
薬物療法をうまく進めるには,治療による日常生活の困りごとを把握して支援することが不可欠である.看護師の役割が非常に大きいことは言うまでもない.
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