連載 My Favorite Medicine!! 私が注目している抗がん薬を紹介します 【12】
パルボシクリブ(イブランス®)
菅野 かおり
1
1公益社団法人日本看護協会神戸研修センター
pp.46-47
発行日 2021年1月1日
Published Date 2021/1/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango26_46
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どんな薬?
パルボシクリブは細胞周期の調整にかかわるCDK4とCDK6を標的とした薬で,日本では2017年に発売となりました.当初はカプセル剤が開発されましたが,薬物動態の面から食後に投与しなければならず,飲み忘れなどへの対応として食事に関係なく服用可能な利便性を考えて,2020年7月に錠剤が発売となりました.ほかのCDK4/6阻害薬にはアベマシクリブがありますが,海外で承認を受けているribociclib(リボシクリブ)は,パルボシクリブによってこの領域の医療ニーズが満たされたとし,日本での開発は中止されました.
パルボシクリブはホルモン受容体陽性乳がん患者に適応で,内分泌療法と併用して使います.内分泌療法によるサイクリンDの発現抑制を介したCDK4/6の間接的阻害が薬効として加わるためと言われています.細胞増殖を促進するシグナル伝達系のエストロゲン受容体(estrogen receptor:ER),PI3K/Akt,Ras/MAPKなどが活性化すると,サイクリンDの発現が上昇し,腫瘍や細胞に発現しているCDK4またはCDK6と複合体を形成します.この複合体によって細胞周期が進行し続け,細胞が無秩序に増殖すると言われています.ER陽性の患者の大半にサイクリンDが過剰発現していることがわかっています.そのため,内分泌療法によるサイクリンDの発現抑制とパルボシクリブによるCDK4/6阻害作用によって効果が増強されます.
今後は,ほかのがん種でシグナル伝達系抗がん薬との組み合わせなどによる治療開発も予想され,注目される抗腫瘍薬の1つです.
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