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特集にあたって
生涯でがんに罹患する確率が2人に1人と言われる中,消化器がんは悪性腫瘍の死因の第1位を占めています.とくに,胃がんは,男性が生涯で罹患する確率が9人に1人と言われ,もっとも高い確率が示されているがんです.そのため,さまざまな医療現場で消化器がん患者に出会う機会があります.
手術は開胸・開腹の方法から腹腔鏡下で行う方法が主流となり,今日ではロボット手術も拡大しており,周手術期看護にも新たな知識や技術が求められるようになってきました.また,消化器がんの術後合併症である周術期感染症は,入院期間の延長とコストの増大を招き,患者の満足度を著しく損なうだけではなく,長期予後も悪化させる可能性があると報告されています.そのため,術後合併症を予防し,術後回復の強化を目指し,医療者が術前から患者のセルフケアを支援することで,患者自身が呼吸訓練,早期離床,口腔ケアの必要性を理解し,積極的に実施することが重要と言われています.
しかし,入院後の術前期間は2日程で短く,患者はその間に手術,麻酔の説明を受けて,術前オリエンテーション,歯科受診,呼吸訓練,術前検査などきわめて多忙であるため,セルフケア支援の内容を十分に理解して実施することが困難な状況といえます.実際に,入院前に医療者から禁酒・禁煙,呼吸訓練の指導を受けたにもかかわらず実施されていなかったり,歯科衛生状態も不十分なことが多くあります.その原因として,患者から「術後のイメージが十分できずイメージの乖離があった」ときいたりもしました.そこで当院では,消化器がん手術患者を外来時から術後まで一貫して管理するために,食道がんを皮切りに多職種による周術期管理チーム(通称PERICAN(ペリカン))を2013年に結成して活動を開始しました.それにより患者の予後によい効果をもたらすことができたため,現在は胃がん,膵がん,肝臓がんとがん種ごとにチーム活動を拡大しているところです.
今回は上部消化管がんに焦点を当て,チーム医療の中での看護師の役割を掘り下げるために,臨床現場で役立つ知識,患者を観察するポイント,セルフケア支援,コミュニケーション法の“いま”必要とされる看護のトピックを取り上げました.
本特集が,上部消化管がん看護の“いま”に携わる看護実践者にとって役立つことを心より願っています.
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