特集 生活の視点で読み解く! 今日の緩和ケア ~患者になにが起こっているのか~
Ⅳ 皮膚の恒常性を保つ
自壊部のケア
松原 康美
1
1北里大学看護学部/がん看護専門看護師,皮膚・排泄ケア認定看護師
pp.460-462
発行日 2020年6月15日
Published Date 2020/6/15
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango25_460
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看護師のアセスメント
自壊部の主な症状として,多量の滲出液,におい,痛み,出血がある.創部の状態や部位にもよるが,症状が顕著になるほど日常生活への影響が大きくなる.また,刻々と変化していく創を目のあたりにして,恐怖,悲嘆,不安を抱いたり,創部の処置やケアに難渋することで精神的・経済的な負担にもつながる.
自壊部のアセスメントは,局所状態を観察しながら,①どこの(創の中央・辺縁,創周囲皮膚,創の表面か深部かなど),②どんな症状が(滲出液,におい,痛み,出血など),③どんなときに(ドレッシング材をはがすとき,洗浄時,外用薬を塗布するとき,常時など),の視点で見る1).そのうえで,どのようなことに困っているのか,日常生活にどのような支障をきたしているのかを具体的に聞き,精神的・経済的負担をふまえてアセスメントする必要がある.
たとえば,多量の滲出液のために,一日に何回もガーゼやパッドを交換する状況は,創部のケアに費やす時間やコストがかかるうえ,精神的ストレスにもなる.また水・電解質バランスが崩れて脱水傾向に陥り,疲労感や倦怠感が生じている場合もある.においは,本人だけでなく周囲の人にも感じられることから,外出を控え,対人関係や就労にも影響することもある.痛みや出血は,一時的なこともあれば持続することもある.耐えがたい痛みや多量の出血は,一度でも経験すると,恐怖や不安,予期的な痛みをきたす場合がある.また2次的な障害として創周囲の皮膚障害,創部感染,瘻孔形成が生じると,局所症状がいっそう増強する.
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