- 有料閲覧
- 文献概要
そのとき私はがん看護専門看護師を目指すことを決めた
「いつがん看護専門看護師になることを決めたか」とたずねられると,がん看護について勉強するなかで少しずつ決めてきたように思う.私が看護師として最初に勤めたのは大学病院の消化器内科だった.入院患者の半数以上ががん患者であり,必然的にがんについて勉強する機会は多かった.検査や治癒を目的とした治療の入院がある一方で,治癒困難ながんに対する抗がん治療のために入退院を繰り返される方,年間に数名は亡くなる方もいたが,さまざまな苦痛を抱えるがん患者とその家族にかかわる看護師としての力不足を感じながら働いていた.
その後の配属先が循環器内科であったことをきっかけに,私の関心が「がん看護」,そして「緩和ケア」にあることが明確になった.また,カテーテル治療目的の入院患者が多く,平均在院日数が数日というあわただしい病棟で,心不全の急性増悪で亡くなる方を担当すると,(単純に時間の問題ではないのだが)亡くなっていく方をもう少しゆっくりケアできるといいのにと考えることが多かった.もっと勉強したいと考えるようになったのもちょうどこの時期だった.
希望がかない緩和ケア病棟で勤務することになったが,実践のなかで,目の前の方々の役に立つためにはやはり勉強する必要があるという思いが強くなり,専門看護師の方々に叱られるのを覚悟で言うと,そのためにもっともよい環境が「がん看護専門看護師コース」だったので進学を決めた.なので,初めから「専門看護師になる!」という確固たる自信があったわけではない.
進学してわかったのは,がん看護に関する知識や技術……ではなく(もちろんそれもあるのだが),自分がいかに無知であるかということだった.勉強すればするほど,自分がわかっていなかったことがわかるので,非常にチャレンジングな2年間だった.
大学院を修了後,2年間温かく支援してくれた上司や同僚に応えたいという思い,大学院で学んだ「目の前の実践以外に現場を変える専門看護師としての視点」が非常に新鮮で関心をもったこと,専門看護師になったほうが社会貢献できる機会は多くなるのではないかと考えるようになり,専門看護師を目指すことを決めた.
© Nankodo Co., Ltd., 2019