書評
日本臨床栄養代謝学会JSPENテキストブック
山下 裕玄
1
1日本大学消化器外科
pp.1240
発行日 2021年10月1日
Published Date 2021/10/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_geka83_1240
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- 文献概要
評者は上部消化管診療を専門に行っているが,最近は高齢の胃癌患者が特に多くなってきていることを実感する.前任地でも手術患者の平均年齢は実際に年々高くなっており,70歳以上が6割で,80歳以上も25%を占めるまでになっている.高齢者では加齢に伴う体力・筋力の低下があり,「フレイル」「サルコペニア」と称される病態の頻度も高く,心血管系の併存疾患も多い.高侵襲の治療に耐えられないのではないかと,患者に対して感じることも少なくない.また,栄養状態がもともと良好でないところに,上部消化管手術,特に胃全摘を行うと,経口摂取量低下から栄養障害がすすんでしまう懸念もある.フレイルサイクルの悪循環に入ってしまうと衰弱が進行する一方であり,それを避けるためには栄養障害からの脱却が必須である.高齢者の癌治療では,ガイドラインに記載されている定型手術の提供が大切である一方,疾患そのもの以前に栄養管理上で患者「自身」に必要とされる対応が多く,個々の患者に合わせた究極のテーラーメイド治療が求められるのであろうと考えている.
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