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は じ め に
若年性特発性関節炎(JIA)は,16歳未満に発症し6週間以上持続する原因不明の関節炎である.臨床症状および関節炎の罹患数,血液検査・遺伝子検査所見によって,全身型,少関節炎,リウマトイド因子(RF)陰性多関節炎,RF陽性多関節炎,乾癬性関節炎,付着部炎関連関節炎,未分類関節炎の7つに分けられる.このうち,少関節炎型とRF陰性多関節炎型は発症年齢のピークが4歳未満にある.年少児にピークのあるJIAの存在はあまり知られていないが,重要な事実である.年少児JIAは関節炎症状が主体であり,多くは関節腫脹や疼痛を主訴に一般整形外科を初診する.早期診断・早期治療により滑膜炎をすみやかに鎮静化させ,関節破壊を生じさせないことが関節予後にとって重要である.後述するが,年少児JIAではブドウ膜炎の合併が多いことが知られており,小児リウマチ科・眼科との迅速な連携が必要である.
4歳未満の児は言語発達が未熟であり,疼痛の部位をはっきりと訴えることができない.また,医療行為に対する恐怖感が強く,診察・検査に児の協力が得られない.このため侵襲的検査にはマンパワーとコストを要する.年少児JIAは外傷や化膿性関節炎のように泣きわめくほど強い疼痛はないため,家庭でも医療機関でも経過観察とされやすく,小児リウマチ科の受診までに時間を要しているのが実情である.よりアクセスしやすい小児整形外科医としてこのタイムラグを調査し,どこに介入すればタイムラグが減少するかを考えるため本研究を開始した.
MRIは本疾患の診断の鍵となるが,4歳未満では鎮静を要することが多く,整形外科医にはハードルの高い検査である.鎮静はリスクを伴う処置であり,救急対応可能な小児科医が常駐する施設(小児科医の充実した総合病院あるいは小児専門病院)への紹介が必要である.どのような臨床像を呈する児に鎮静のリスクをとってMRIを実施すべきかを検討するため,当科を受診した年少児JIAの特徴と臨床像を調査した.またMRIにかわり,この世代でも鎮静なしに,非侵襲的に実施可能である運動器エコーの活用法を紹介する.
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