Japanese
English
骨・関節感染症の治療戦略 Ⅰ.疫学・病態
3.バイオフィルム,クオラムセンシング
バイオフィルム感染の病態と治療戦略に関する新しい知見
Biofilm infection:new insight into the pathological condition and treatment strategy
稗田 裕太
1
,
崔 賢民
1
,
稲葉 裕
1
Y. Hieda
1
,
H. Choe
1
,
Y. Inaba
1
1横浜市立大学整形外科
1Dept. of Orthop. Surg., Yokohama City University, Yokohama
キーワード:
biofilm
,
antibacterial implant
,
quorum sensing
,
quorum quenching
,
minimal biofilm eradication concentration
Keyword:
biofilm
,
antibacterial implant
,
quorum sensing
,
quorum quenching
,
minimal biofilm eradication concentration
pp.20-24
発行日 2022年4月25日
Published Date 2022/4/25
DOI https://doi.org/10.15106/j_besei81_20
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は じ め に
近年,バイオフィルムに関する新規の研究結果として,病態の理解としてバイオフィルム形成における原因菌の集簇・成熟・菌体外毒素の放出のプロセスや,バイオフィルムに対する有効な治療に関する進歩が報告される1).バイオフィルム関連感染では,バイオフィルム内の菌は抗菌薬や免疫応答から守られているため,従来抗菌薬の効果判定に使われる最小発育阻止濃度(minimum inhibitory concentration:MIC)が局所で達成されても,十分な殺菌効果が得られない可能性が報告されている1,2).そのため,バイオフィルムが難治性の原因となる整形外科感染症では,バイオフィルムの形成を予防とした抗菌作用をもつ生体材料の使用や,感染巣でのバイオフィルムの破壊をターゲットとした局所抗菌薬治療が新たな治療方法として期待される.さらに,クオラムセンシングと呼ばれる細胞同士のシグナル伝達を抑制することで,細胞の共同体の組成であるバイオフィルム作成を阻止する治療法が注目されている3,4).ここでは,インプラント周囲感染に対する治療戦略として,近年報告されるバイオフィルム形成の予防やバイオフィルムの破壊に注目した治療戦略に関する新しい知見について概説する.
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