日常診療で診る感染症 この疾患を見落とすな
パンデミック(H1N1)2009の2009-2010流行の総括と得た教訓
工藤 宏一郎
1
1国立国際医療研究センター 国際疾病センター
キーワード:
インフルエンザ-ヒト
,
死亡率
,
社会経済的因子
,
多機関医療協力システム
,
各国の保健医療制度
,
Oseltamivir
,
Zanamivir
,
インフルエンザウイルスA型H1N1亜型
,
公的医療保険
,
パンデミック
Keyword:
Influenza, Human
,
Mortality
,
Multi-Institutional Systems
,
Socioeconomic Factors
,
Influenza A Virus, H1N1 Subtype
,
Oseltamivir
,
Zanamivir
,
Pandemics
,
Not-For-Profit Insurance Plans
pp.773-780
発行日 2010年11月1日
Published Date 2010/11/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00974.2011021853
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
・パンデミック(H1N1)2009は世界的にみて、若年者に多く感染・発症するインフルエンザであった。とくにわが国では20歳以下が大多数であった。過去に接種したワクチンや季節性インフルエンザの抗原性との交差性を有し、年長者には何らかの免疫・抵抗力があったと想定される。・死亡者数は、各国によってかなり異なる。とくにわが国においては200例弱であり、幸いにして世界的にみてきわめて少なかった。伝播したウイルスの感染性は同一であったことを鑑みると、重症化・死亡には社会的、医療インフラの要因が影響していることが強く示唆される。・多くは軽症で、ウイルスはいわゆる弱毒性であった。死亡者は基礎疾患を有する高齢者に多かった。ウイルス性肺炎が契機になったと思われる。併発性あるいは続発性細菌感染は国際的に死亡者の20~30%といわれている。その鑑別は臨床的に容易でない場合が少なくない。・基礎疾患のない患者の重症化の機序は不明のことが多い。・診療体制として、全体を統括・指示する部署と、地域の重症度に応じた診療と治療を担う地域医療連携体制の両方が必要である。
©Nankodo Co., Ltd., 2010