医療ビッグデータと外科 医療ビッグデータ総論
医療ビッグデータの活用と個人情報保護は両立するのか?
山本 隆一
1
1医療情報システム開発センター
キーワード:
医事法制
,
医療情報コンピュータ処理
,
データベース
,
保健医療サービス
,
診療報酬明細書
,
プライバシー保護
,
臨床研究
Keyword:
Clinical Studies as Topic
,
Administrative Claims, Healthcare
,
Confidentiality
,
Health Services
,
Legislation, Medical
,
Medical Informatics Computing
,
Databases as Topic
pp.475-480
発行日 2016年5月1日
Published Date 2016/5/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2016229896
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わが国は医療の情報化自体は先進的であったし,現在でも情報システムの導入率という観点では世界の最高水準にある.しかし,情報化の目的は,事務処理の合理化が主体であり,情報を公益目的に利用する二次利用の面においては遅れていたといわざるをえない.しかし最近になって,わが国にも大規模な医療情報データベースが構築されるようになったが,それに伴い,公益利用とプライバシー保護の対立的な問題が顕在化してきた.たとえば高齢者の医療確保に関する法律に基づいて作成されたレセプトおよび特定健診・保健指導のデータベースは,一般的な公益利用に関して根拠法には記載がないために,利用に際して厳格な匿名化が求められ,安全管理に関する要求も厳しく,公益研究にとって使いやすいデータベースとはいえない.一般に,公益目的の研究を行う研究者がプライバシーの侵害を意図的に行う可能性はないと考えられるが,法的な要求自体が曖昧であるために,研究が促進されない可能性もある.医学は診療情報の公益利用なしには発展はありえないので,明確で研究者にとっても患者にとってもわかりやすい法制度の整備が強く望まれる.改正個人情報保護法が2015年9月に成立したが,政令や指針の整備は2017年と思われる法の実施までに議論される.臨床研究に携わる者はこれらの議論を注視すべきであるし,必要な場合は適切な提言を行うべきと考えられる.
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