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トラブル一歩手前の問題
千種 峯藏
1
1関東信越医務出張所
pp.7-12
発行日 1955年6月1日
Published Date 1955/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541200964
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終戦後,病院の関係者として,砂を噛む様な,名状し難い不愉快な思いをさせられたのは,所謂患者攻勢と呼ばれる病院のトラブルであつた。それも殆んど療養所に限られた形であつたから,正確には,療養所のトラブルと言うべきかも知れない。職員組合による行過ぎも,種々あつたことだから,病院のトラブルは,患者攻勢一点張りという訳ではなかつた。それでも,職員組合の場合は,立場を異にする要求の衝突であつて,合法活動を基盤とする行過ぎであつたから,筋のない話ではなかつた。ところが,患者攻勢となると,日夜為めによかれと思つてやつている筈の,当の患者から,診療や看護の拒否,医師や看護婦の排斥が持上るのだから,一寸肯き兼ねもするし,又,名状し難い気持にもなるわけである。
私自身,事態を拾収すべき立場で扱つた,患者攻勢による療養所のトラブルは,いくつかあるが,その中で,紛争が半年以上に亘つたり,社会的反響が大きかつたりした為めに,有名になつたというだけでなしに,考えさせられる問題を,数多く包蔵しておる点でも,注目すべきものは,T療養所のトラブルであつた。これから,そのT療養所の諸問題を取上げて,考えて見ようというわけである。
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