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Ⅰ.はじめに
高齢化の延伸に伴い,近年,身体疾患の治療のために急性期病院を受療する認知症患者が増えている.2013年に日本老年看護学会が行った調査では,一般病院等において,日勤帯で1人の看護師が受け持つ6〜7人の患者のうち,1〜2人は認知症患者であることを明らかにした(日本老年看護学会,2014).しかし,介護保険施設に比べて,一般病院等では,治療優先のもとに,十分な対応策が検討されないまま身体拘束や薬物による鎮静が行われることが危惧されていている.この背景には医療施設で身体合併症の治療を受ける認知症患者へのケアに関する知識技術の不足およびチームアプローチの未成熟があると考えられる.
このような現状に対して,2016年度の診療報酬改正において,身体疾患を有する認知症患者へのケアを積極的に評価する認知症ケア加算が新設された.この加算は,認知症ケア加算1と2の2種類があり,精神病棟や小児科病棟,産科病棟を除く一般病床のうち,要件を満たした病棟を単位として申請するものである.認知症ケア加算1は,専門医や認知症看護認定看護師,老人看護専門看護師等を含む認知症ケアチームを組織することが要件とされるため,いまのところ急増は見込めない.
一方,認知症ケア加算2は,認知症ケアに関するマニュアル整備のほか,厚生労働省の指定を受けた認知症看護研修(以下,研修)を修了した看護師を病棟に複数名配置することが要件となっている.以上の背景から2016年5月以降,本学会をはじめ諸団体による研修が都市部を中心に実施された.認知症看護研修は,「認知症の原因疾患と病態・治療」「入院中の認知症患者に対する看護に必要なアセスメントと援助技術」「コミュニケーション方法および療養環境の調整方法」「行動・心理症状(BPSD),せん妄の予防と対応法」「認知症に特有な倫理的課題と意思決定支援」を含む,9時間以上の講義・演習と内容を規定されている.
本研究の目的は,この研修に看護師を派遣し,認知症ケア加算2の算定を届出た病院を対象に質問紙調査を行うことで,届出病院の特徴,ならびに研修効果を明らかにし,研修の課題を検討することである.
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