ケース・レポート
日常生活行動の改善に関する研究
嘉手苅 英子
1
1琉球大学医学部保健学科
pp.39-51
発行日 1983年8月15日
Published Date 1983/8/15
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Ⅰ.はじめに
看護の働きかけによって対象の状態が改善されたことを実証するには,意図的な看護実践によって対象にどのような変化を生じたかを把握する必要がある.看護を,対象のより健康的な生活をめざしてその人の生活過程をととのえようとする活動であるととらえる立場に立てば,対象の変化は生活過程の有り様の変化を把握することが必要である.生活過程の有り様の変化を把握するためには,日常生活の有り様に沿って対象が自分でできることは何で,他者の援助を必要としている部分は何かを把握できなければならない.
日常生活を営む上でどうしても欠くことのできない行動を観察し評価しようとする考え方は,人間の健康的な生活をめざす分野において共通のものである.一定の評価基準に沿って,環境との対応を考慮しながら残された能力を評価する方法が,特にリハビリテーション医学において検討され深められてきている.ところが残された能力は同じでも,生活をする上で他者への依存度は必ずしも同じとは限らず,対象の意志や世話する人の考え方,物的条件などによって実際に発揮される力に違いを生じている現実がある.生活過程をととのえるという看護の視点に立つと,毎日の生活の中で対象がどのようにもてる力を発揮しており,どう改善できるかが問題となってくる.
そこで看護過程の具体例の中から,看護のどのような働きかけが生活過程における日常生活行動を改善するのかを明らかにし,看護実践に役立つ看護上の論理をとり出してみたい.
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