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はじめに
日本のみならず先進国はこれまで人類が経験したことのない少子高齢社会を迎えようとしている.私たちは豊かで活気ある高齢社会を目指して準備しなければならない.国民の健康と福祉はそのような社会を実現するための要件である.(保健師の機能を含め)看護と助産は国民に良質のケアを届けるために重要な機能である.そうした役割を担うために数の確保は不可欠であるが,さらに質は看護専門職自らが保証しなければならないことである.看護の質の確保を効果的に支えるのは継続教育を含めた教育システムである.よく整備された実際的な教育システムの再構築は,我々看護専門職が今取り組まなければならない重要課題である.
少子社会では,看護師の人的資源も減少する.選ばなければ誰でも大学に入れる大学全入時代となる.この意味するところは,学生の学習能力の相対的な低下である.専門職に従事するには,その質を維持するために,長期にわたる厳格な教育を受けなければならない.多くの看護師はセミプロフェッションであるが,自分の分野でプロとして仕事を行う者もいる.重要なことは,ある分野での能力を高めたいと思った時にすべての看護師にそのチャンスがあることである.それには,専門職になりたい時に基本的な能力を持っていなければならない.この基本的な能力は大学教育で涵養される.したがって,看護の基礎教育は学士レベルで行い,上級の実践能力を持つ看護師の教育を大学院レベルで行うべきである.そのような看護教育システムは看護師自らが看護以外の人々とともに考えていくべきことである.人々のために保健医療福祉がよりよく機能する社会をつくるための未来像を描こう.慢性疾患を抱えて社会に生き,初期的救急医療を求め,家庭で亡くなろうとしている人々のケアができるのは看護専門職である.看護師の質と量は健康な生活を送ることや死から逃れられない我々の課題である.
今日,アジア,豪州,欧州,米国の多くの国々で,看護職の基礎教育課程が学士レベルで行われるようになってきている.先進諸国で登録前教育が学士レベルに移行していない国は数えるほどで,英国もその一つになってしまうだろうと看護教育者Spouse(2003)が著書の序で述べている.我が国も同様の立場にある.
今回は,英国で2004年8月1日より登録が開始された地域公衆衛生専門看護師(specialist communitypublic health nurse)を取り上げ,日本の保健師の大学院教育の必要性と可能性を探る.
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