書評
「新 ことばの科学入門」
立石 雅子
1
1慶應義塾大学病院
pp.53
発行日 2005年3月1日
Published Date 2005/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.6001100031
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
言語聴覚士の業務領域は,聴覚,成人言語,小児言語,発声発語と多岐にわたるが,いずれの領域の障害を対象とする場合にも,話しことばはその中心を占めている.それゆえ,話しことばの生成と知覚に関する仕組みを学ぶことは,言語聴覚士を目指す学生すべてにとってのファーストステップである.この仕組みの包括的な理解が,聴覚器官,発声発語器官および大脳の生理・解剖学,言語学,音声学,音響学,聴覚心理学など専門基礎領域の重要性の自覚につながり,専門領域である言語聴覚障害学へと学習を発展させていく過程における重要な鍵となる.
本書では,まず話しことばの言語における位置づけから論を起こし,ことばの生成と知覚に関し音響学,発声発語器官の解剖生理,ことばの生成とフィードバック機構,聴覚の解剖生理,聴覚心理学などが有機的に構成されていることに特徴がある.読者はそれぞれの部分を独立したものとしてではなく,一貫性のある体系として話しことばに関する知識を学ぶことができる.原書は1980年の初版以来,およそ四半世紀にわたり第4版まで版を重ねた,隠れたロングセラーともいうべき本である.音声科学についての広汎な知識を統合的に伝えることを目的とした著者らの意図は,叶えられたと言えよう.
Copyright © 2005, Japanese Association of Speech-Language-Hearing Therapists. All rights reserved.