巻頭言
アクティブに体を動かしやすい地域をつくる
鎌田 真光
1
1東京大学大学院医学系研究科 公共健康医学専攻 健康教育・社会学分野
pp.396-397
発行日 2021年1月15日
Published Date 2021/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5003201259
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皆さんは,普段,体をよく動かしていらっしゃいますか? 私は「世界から運動不足をなくす」ことを第一のミッション(使命)にしています。そんなの無理だろう! という声が聞こえてきそうです。その通り,大変難しい課題です。では,諦めてよいでしょうか? 一人ひとりの状態に応じて少しでもアクティブな生活を送ることが健康の維持増進に重要であることがわかっています。しかし,現状では運動不足(身体活動の不足)は喫煙・高血圧に次いで日本人の3番目の死亡原因であり,世界では年間530万人の死亡につながっています1)2)。世界的な蔓延(パンデミック)が続いている運動不足の対策は急務であり,挑戦しがいのあるミッションです。
私が以前,市職員(研究員)として勤めていた島根県雲南市では,住民の皆さんと行政の協働により,まち全体で中高年者の運動不足を減らすことに成功し,これは厳格な検証に基づく世界初の成功例となりました3)4)。運動(身体活動)と健康については,さまざまな誤解もあり,環境づくりと合わせて科学的に正しい情報の普及も不可欠です。このプロジェクトでは明確な成果が確認できるまでに5年間もの時間を要しました。その際,住民の皆さん自身の力,「クチコミ」が大きな力を発揮しました。健康づくりや行動変容の普及において,人と人とのつながりは強力なツールとなり得ます。
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