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はじめに
慢性期医療におけるケアマネジメントというなかなか難しいテーマであるが,まずは地域医療を包括した「慢性期医療」とは何かを少し整理してみたい。慢性期医療の対軸にある機能として,急性期医療がある。仮に慢性期医療を,本人の「できるだけ住み慣れた地域で住み続けたい(という気持ち)」を支える医療とすれば,急性期医療は基本的には退院がゴールだが,慢性期医療の最終的なゴールは「看取り」ということになろう。つまり慢性期医療の究極の目的とは,QOL(quality of life:生活の質)の維持向上ではなく,QOD(quality of death:死の質)の向上ということである。そのゴールとしての「死」が1年後なのか5年後なのか,はたまた10年後かでプランが多少変わってくるが,未来永劫続く命はなく,必ずいつかは看取りの場面がやって来る。その「死」というゴールを常に意識しながら,生涯をマネジメントしていく覚悟が必要なのである。
そのためには,その時,その患者(利用者)が最終的にどういう看取られ方をしたいのかを上手に引き出し,その方に合った看取りにするために,家族の希望も聞きながらケアプランに落とし込んでいくというのが,慢性期医療としての究極のケアマネジメントのあり方ではないだろうか。
どんなに元気で医者いらずの利用者であっても,最終的には「死」を迎え,その際には死亡診断書を書く医師が寄り添っていなければならない。そうではなく,万が一検死扱いになってしまえば,それがどれだけ大変な状況を生むかは想像にかたくない。だからこそ慢性期における医療との連携は大変重要であり,ましてやなんらかの疾患に罹患している状態であればなおさらである。その際はその疾患の予後予測も含めて医療との連携は大変重要なキーワードであり,この点からも常に医療とのかかわりを持つ覚悟もまた大切だ。今回はこのような視点に立って,池端病院(以下,当院)の現状と課題から見えてくる地域医療を中心とした慢性期医療のケアマネジメントについて,私見を含めて少しひもといてみたい。
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