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はじめに
「姿勢」とは,頭部・体幹・四肢の身体各部位の相対的位置関係を示す「構え」(股関節外転位,体幹前屈位など)と,身体が重力の方向とどのような関係にあるかを示す「体位」(立位,座位,臥位など)から構成される概念である。したがって,加齢に伴って心身に生じる生理的変化から「構え」と「体位」の相互作用を整理し,「体位」ごとに「生活障害」を整理することで「高齢者の姿勢と生活障害」を論じることは,リハ専門職にとってなじみやすい切り口であると言える。
しかしよく考えてみれば,われわれは体位ごとに分節的に生活しているわけではない。「姿勢」と「生活」という抽象概念を具体化するために,「座位における…」「立位での…」などと「姿勢」を体位ごとに分節化し,そこでとらえた「生活」を構造化しようとしても,体位ごとに生活しているわけではないため,おのずと限界もあるし,体位ごとにとらえた事象を積み重ねても,「生活」をとらえたことになるとも言えない。
現実には「構え」と「体位」を「動作」がつないで「生活」につながるわけで,「動作」の背景には物理学や運動学で言う「運動」があり,「動作」の先には,「価値」に基づく動機づけに加え,物的・人的・社会的な環境因子との相互作用を踏まえた,目的動作としての「行為」がある。さらに,その先には地域自立生活という意味での「活動」があり,自己実現という意味での「人生」がある。したがって,「運動」を背景とした「姿勢と動作」から「価値」「行為」「活動」「人生」といった「生活」をとらえようとするだけでなく,「生活」あるいは「生活障害」の構造を理解したうえで,そこに影響を与える「姿勢と動作」をとらえようとすることも重要である。
そこで本稿では,「姿勢と動作から生活をとらえる」のではなく,「『生活』から姿勢と動作をとらえる」という視点から,「高齢者の姿勢と生活障害」について論じる。
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