巻頭言
国民の生活に寄り添った歯科保健医療の提供を目指して
武井 典子
1
1公益社団法人日本歯科衛生士会
pp.354-355
発行日 2016年6月15日
Published Date 2016/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5003200383
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近年では,5疾病に対してオーラルヘルスケア(口腔ケア)が有用であることの認識が高まり,周術期などの口腔機能管理への対応が求められている。また,窒息や誤嚥を予防して安全に美味しく食べられるよう,生活の中で口腔機能の向上を目指す,より幅広い概念のオーラルヘルスケアが求められている。このような口腔機能の維持向上を目指したオーラルヘルスケアは,歯科疾患や肺炎予防だけでなく,生きる楽しみやQOLの向上,さらには高齢者のフレイル予防にもかかわるとの認識が高まっている。筆者らの調査では,歯科診療室に20〜30%のフレイルの疑いのある高齢患者が来院しており,今後,口腔機能を高める歯科保健指導によりフレイルの予防に貢献することが重要となってくる。さらに,地域包括ケアシステムが推進される中,歯科保健医療においても外来患者中心の「歯科完結型」から「地域完結型」へと変化し,歯科衛生士の役割も多職種連携の中で専門性を発揮することが期待されている。
一方,歯科衛生士の就業者数は11万6,299人(2014年調査)であり,主な就業先は「歯科診療所」が10万5,248人と圧倒的に多く,そのほか病院5,882人,保健所・市町村2,718人,介護老人保健施設482人および事業所,学校養成所などとなっている。近年,「病院」「介護老人保健施設」の就業者数に増加傾向が認められるが,構成割合に大きな変化はない。これらの状況から,歯科診療所から地域や生活の場に視点を広げ,医療・介護との連携による歯科衛生活動の進め方や業務のあり方が課題となっている。
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