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はじめに
近年,脊椎インストゥルメンテーションの進歩とともに,その設置,特に椎弓根螺子(pedicle screw:PS)設置をアシストする機器も急速に進化している.その代表的なものはnavigation systemであり,これは手術器械や螺子の方向とCT画像により構築された骨組織の3次元的位置関係をモニター上に仮想的に可視化することで,術者のインストゥルメンテーション設置をナビゲートする.2000年代以降,その普及によってPSの刺入精度は格段に上昇した.当初navigation systemは,術中にsurface point registrationを行い術前CT画像とのシンクロを行っていたが,その後cone beam CTなど,術中にCTライク画像を撮像できるimaging deviceが登場した.これによりsurface point registrationを必要としないreal-time navigationが可能となり,その利便性はさらに向上した.
小児側弯症の分野においても,navigation systemから多大な恩恵を受けている.小児側弯症症例においては,椎弓根が細く椎体自体も変形しており,PSの設置は成人変性疾患と比して技術的に難しいことが多い.Navigation systemの普及は小児側弯症手術におけるPS設置精度を飛躍的に向上させ2),同時にscrew densityを高めることで矯正率の向上にも寄与している.今やnavigation system補助下のPS設置は小児側弯症手術のスタンダードとなりつつあるといってよい.
しかし,小児側弯症の治療においては放射線被曝の問題がある.2000年にDoodyら4)は,小児期に側弯症と診断された患者は,単純X線検査などの被曝により,乳がんによる致死率が高いことを報告した.より近年のデータベース研究では,小児期にCT検査を受けた患者は,受けていない患者と比してがんリスクが1.2〜1.3倍増加すると報告されている11).発がんのリスクは多因子的であるが,過去の研究からは小児期のCTによる放射線被曝と発がんとの間には有意な関連性があるのは間違いない20).小児は放射線に対する感受性が高く(成人と比して細胞分裂が盛んで,細胞分裂が盛んな細胞や細胞分裂の回数が多い細胞は放射線の影響を受けやすい),また放射線で誘発される長期的影響をきたすほど長い余命を有しているのが主な理由である.通常の放射線診断程度での放射線被曝でがん誘発の可能性を心配する必要はないものの,繰り返し検査を行う場合は集積線量が問題となるため,1回の被曝線量をできるだけ抑える必要がある.これは現在のnavigation systemを使用した小児側弯症手術でも問題になる.Dukeら5)は,手術を行った思春期特発性側弯症(adolescent idiopathic scoliosis:AIS)患者の放射線被曝量を調査し,術後2年間のX線による画像フォローより,術中の透視やCTによる被曝が圧倒的に多いことを報告した.小児側弯症手術においても,術中CTやCTライク画像を用いたnavigation手術では,透視装置を用いた場合と比して放射線被曝が多いことが報告されており21),このようなimaging deviceを用いた場合の手術での被曝量の低減が望まれる.
われわれの施設では,遊走式CT(SIEMENS社,128列SOMATOM Definition AS+Sliding Gantry)を備えたhybrid手術室がある.このCTは管電流の自動調整機構,逐次近似画像再構成など,以前のものと比して被爆軽減対策がなされている.また,navigation system(Curve®,Brainlab AG)と連動することができ,これにより術中に撮像したCTを用いたreal-time navigationが可能である.元来われわれは小児の場合,術前後の評価のためのCT撮影は被曝量を低減するためquality reference mAs値を下げ,通常の撮像線量の1/6〜1/5程度で撮影していた.この術中CT(iCT)導入以来,術前後評価時と同様に低線量で術中CTを撮像し,この画像を用いてregistrationを行い,navigation systemを使用している.
本稿では,低被曝iCTを用いたAIS手術のPS設置の実際を紹介するとともに,そのPS設置精度を報告する.
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