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はじめに
腰椎疾患による神経根性疼痛は,椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄に伴う神経根の圧迫によって惹起される.片側または両側の下肢に髄節性に放散する疼痛やしびれで,腰椎の運動によって痛みが増強することから,日常生活動作が高度に障害される.さらに,下肢痛だけでなく,腰痛を伴う.急性期には,疼痛のために睡眠が障害されることもある.一方,画像上での神経根の圧迫が,必ずしも痛みの発現に直結しないことも明らかにされている.神経根性疼痛の発現には,機械的圧迫に伴う神経根,後根神経節,そして脊髄を含む中枢神経での神経伝達物質や炎症性サイトカインなどの化学的因子が関与している.そして,神経根圧迫による神経根内血流の低下によって神経伝導速度が低下することが判明している.すなわち,神経根性疼痛の発現には,神経根の機械的圧迫ばかりでなく,炎症性物質の発現や神経根の機能異常も関与している.同じ神経根性疼痛でも,脊柱管狭窄のように姿勢による機械的圧迫の変化によって痛みが容易に変化する病態と,椎間板ヘルニアのように炎症が大きく影響する病態では,痛みのメカニズムが異なる.いずれにしても,腰椎疾患由来の神経根性疼痛では,姿勢によってその痛みが変化することから,機械的圧迫が重要な因子であることは間違いない.
臨床では,下肢痛を伴っている神経根性疼痛の診断は,疼痛の領域,神経学的所見,画像所見,および神経根ブロックの効果などから,その診断は比較的容易である.一方,下肢痛を伴わない腰痛や殿部痛の場合には,神経根性疼痛か否かの診断に迷うことが少なくない.われわれは,神経根に起因する腰痛(神経根性腰痛)や殿部痛の解剖学的特徴や臨床的特徴について研究を重ねてきた.
本稿では,腰仙椎部における神経根性疼痛をきたす解剖学的特徴や病態2,5),および神経根性腰痛の臨床的特徴について解説する.
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