むつみ庵の日々・第5回
何が何だか,わからない
日髙 明
1
1NPO法人リライフむつみ庵
pp.449
発行日 2022年5月15日
Published Date 2022/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001202969
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シマダさんはむつみ庵の入居者さんたちの中では若い方で,足腰もしっかりしています.「病気はしたことがありません」というのが口癖で,むつみ庵にはお手伝いに来ていると思っているところがあります.じっとしているのが苦手で,常に何かしていないと落ち着きません.そのため昼食後すぐなどアクティビティのない時間帯になると,自室に戻って室内の片づけを始めるのですが,「何かしないといけない」という思いだけがどんどんと膨らんで切迫してくるようです.すると,入浴や家事やレクリエーションのために声をかけても,聞きません.「すみません,用事があるんです.何だったかな.あの,えっと,あれをしなければいけないんですけど.あれ……」
シマダさんからすると,他のことをやっている場合ではないという気分なのだと思いますが,では何をすべきなのか,どこに行くべきなのか,ということについては,ご本人にも明確にはわからない.もっと大事なこと,やらなくてはいけないことがあるはずなのに,それは何だっけ? 自分はどうしてここにいるんだろう? 今何をしているんだろう? このように思考が入り乱れてくるのではないかと思います.
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