Japanese
English
特集 股関節疾患への作業療法
股関節周囲の機能と解剖
Functional and anatomical aspects of hip joint including around tissues
林 𣳾史
1
Yasufumi Hayashi
1
1原宿リハビリテーション病院
pp.1350-1354
発行日 2021年11月15日
Published Date 2021/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001202764
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Key Questions
Q1:股関節のリハビリテーション訓練で中殿筋を強化する理由は?
Q2:大腿骨近位部骨折に対する2つの手術アプローチは?
Q3:変形性股関節症の2つのタイプとそれらの特徴は?
人類の進化と股関節の解剖学的変化
哺乳動物が誕生して進化した約2億2000万年間の2%余りの期間,約500万年前に誕生した人類は直立2足歩行で移動し大型化した.短期間に進化した人類は4足歩行動物時代の骨格構造を色濃く残したまま,肩,腰,股関節等に直立2足歩行に伴う新たな機能を付与し,自由になった上肢に文化的な機能をもたせたため,上肢機能にかかわる職種,OTが誕生したともいえる.
直立2足歩行をした大型人類は,骨盤の横幅を類人猿よりも拡大させて上半身を支持したため,両足底の中央に重心をかけて安定歩行をしようと,左右に離れた大腿骨近位端から足に向かう骨軸を内転方向に傾斜させている.ところが,大腿骨軸を内転傾斜させる5種類の内転筋の働き過ぎで両下肢がはさみのように交差するのを防ぐため,拮抗する中殿筋に外転作用をさせている1).一方,4足歩行をする動物時代では屈曲90度を中心にして股関節を動かしていたが,直立2足歩行をする人間では屈曲0度を中心にして歩くことになったため,股関節の構造上では難しい屈曲0度以上の伸展作用を大殿筋に担わせている.股関節疾患のリハビリテーション訓練では中殿筋の外転作用と大殿筋の伸展作用が重要になるのは,人類の骨格構造の進化の遅れを補塡するためである.
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