わたしの大切な作業・第1回【新連載】
杉苔の庭づくり
玄侑 宗久
1
1福聚寺
pp.201
発行日 2018年3月15日
Published Date 2018/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001201204
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ここ数年、大正五年に植えられた境内の染井吉野の下枝が枯れかけてきた。下枝に繋がる根は地表ちかくに張っているらしい。長年続けた草引きのせいで、地面が水も吸えないほど堅くなってしまったのである。
震災後に始まった本堂や庫裏の工事に合わせ、思いきって草を生やすことにした。神社仏閣の庭に草とは驚かれるだろうが、土を軟らかくするにはそれが一番の早道だ。土の通気通水を促すため、地中には炭や木や竹を入れ、その上に木の葉や土を載せた。あちこちに掘ったそんな水脈を通り、水は速やかに吸い込まれて流れ去るようになった。
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