あなたにとって作業療法とは何ですか?・第20回
あなたにとって作業療法とは何ですか?
駒井 由起子
1,2
1特定非営利活動法人いきいき福祉ネットワークセンター
2東京都若年性認知症総合支援センター
pp.1003
発行日 2016年8月15日
Published Date 2016/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001200695
- 有料閲覧
- 文献概要
知から始まる
私は毎日多くの人と会う仕事をしている.NPO法人の理事長ということもあり,病気や障がいのある人や関係機関だけでなく,補助金事務手続きの役所職員,施設修繕の工事担当者等,さまざまであるが,合間にする雑談から,出会った人を「知る」ことが日々の楽しみになっている.若い役所職員がスポーツバーで仕事の発散をする話,工事担当者の家族への思いを何気ない会話から知ることが,本来の仕事を円滑にしたり,作業療法で役立つ知識となる.作業療法は「知」を大切にする仕事と思う.人と知り合い,その人をよく知り(評価),人から得た知識を蓄積して,またいつか人のために知識をOTの業とする.
ある若年性認知症の人は,物忘れエピソードを話す妻の横で,すまなそうに長身の背中を丸めて座っていたが,退職前の飲料缶デザインの仕事の話になると,背筋はいつの間にか伸び,言葉に詰まりながらも堂々とした佇まいでその作業工程を教えてくれた.後日私は近所のスーパーマーケットで缶を手に取り,再びその人の人生が輝く方法を考えている.作業療法は「知」から始まるのである.
Copyright © 2016, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.