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Key Questions
Q1:精神障害アウトリーチ推進事業とは?
Q2:精神科重症患者早期集中支援管理科とは?
Q3:地域生活支援事業におけるアウトリーチとは?
精神保健医療福祉の現状
「平成23年患者調査」によると,医療機関を受療する精神疾患の患者数は320万人を超えている(宮城県の一部と福島県は除く).その背景には,疾患概念の普及による受診の増加,人口構造の高齢化による認知症の増加等が考えられている.うつ病等の気分障害については,依然高い割合で推移している.このうち,入院患者に関しては,精神病床に入院している患者数は約29万人おり,統合失調症患者数は約17万人と全体の約6割を占めており,うち1年以上の長期入院患者は13万人である.認知症患者数は約5万4,000人であるが,年々その割合は増加しており,うち1年以上の長期入院患者は約4万5,000人であった.さらに,全入院患者のうち65歳以上の患者数は14万6,000人と全体の約50%を占めている.以上のことから統合失調症を中心とした長期入院患者の退院促進や地域生活支援はまだ十分に進んでいるとはいえない状況にある(図1〜4).このため,精神保健医療福祉施策においては,2004年(平成16年)9月から「入院医療中心から地域生活中心へ」という基本理念に基づく「精神保健医療福祉の改革ビジョン」を推進し,精神障害者が地域で安心して自立した生活を送れるような社会としていくとの認識のもと,精神疾患に対する国民の意識の変革や,精神保健医療体系の再編と基盤強化等のさまざまな施策を講じてきた.さらに,「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」〔2010年(平成22年)6月29日閣議決定〕に沿って,精神保健医療の充実に向けた検討を進めてきた(図5).
この「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」において,退院支援や地域生活支援については,
・「社会的入院」を解消するため,精神障害者に対する退院支援や地域生活における医療,生活面の支援に係る体制の整備について,総合福祉部会における議論との整合性を図りつつ検討し,平成23年内に結論を得る.
とされ,「新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム」での議論等を行った(図6).その後,平成23〜25年度まで「精神障害者アウトリーチ推進事業」を実施し,平成26年度からは,地域生活支援事業の中にアウトリーチの事業の一部を盛り込み,各都道府県で実施できることとなった.また,平成25年度までの「精神障害者アウトリーチ推進事業」で得られた知見を基に,医療密度の高い部分を平成26年度から診療報酬化することとなった.本稿では,平成23〜25年度の「精神障害者アウトリーチ推進事業」,「精神科重症患者早期集中支援管理料」,「地域生活支援事業」について,概説する.
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