講座 これだけは知っておきたい! 解剖・運動学にもとづいたROM治療・第7回
肘・手関節
門脇 達也
1
Tatsuya KADOWAKI
1
1養和病院
pp.50-57
発行日 2013年1月15日
Published Date 2013/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001100011
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肘・手関節の構造
1. 肘関節
肘関節は解剖学的に上腕骨と橈骨,尺骨によって形成された関節であり,同一関節包内に3関節(腕尺関節・腕橈関節・上橈尺関節)をもつ複合関節である.その中でも上腕骨滑車と尺骨滑車切痕からなる腕尺関節を狭義の肘関節と呼び,「肘関節」といった場合はこの関節をイメージすることが多いだろう.腕尺関節は「らせん関節」に分類され,一軸性関節となる.両側の側副靱帯によって運動の強化が図られ,関節の前後は関節包によって支持される非常に安定度が高い関節である.
肘関節屈曲の最終可動域は,尺骨鉤状突起が上腕骨鉤突窩に入り込むことで制限を受ける.しかし,実際は軟部組織による制限が主で,その原因は上腕と前腕の肘関節屈筋群の肥大によって制限を受けることがほとんどである.そのため,他動運動時と自動運動時の最終域に差が生じる.一方,肘関節伸展の最終可動域では,尺骨肘頭が上腕骨肘頭窩に当たる骨性の運動制限であり,自動と他動運動時の差はあまりない.また,肘関節を伸展した際に,尺骨の長軸が上腕骨長軸よりも外方へ約10~20度の傾きを示す.腕尺関節は関節構造上,上腕骨滑車の内側部直径が外側部のそれよりやや大きいため,肘伸展するとこのような角度が生じる.この角度をcarrying angleと呼び,3タイプの型に分類される.ROM治療を行ううえで関節の運動面がどのようになっているか観察し,理解しておく必要がある.
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