特集 感染症
13.感染性心内膜炎—すべてが教科書どおりに症状を呈するとは限らない
筒泉 貴彦
1
Takahiko TSUTSUMI
1
1練馬光が丘病院 総合診療科
pp.275-286
発行日 2013年12月1日
Published Date 2013/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3103900437
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感染性心内膜炎infective endocarditis(IE)は,感染症のなかでも常に細心の注意をもって診断および治療を行う必要があり,医師の判断ミスにより予後が大きく変化し得る病態である。その特徴は時代の変遷とともに大きく様変わりしてきている。これまではリウマチ熱に伴う弁膜症が原因であることが多かったが,最近は抗菌薬の使用に伴うリウマチ熱自体の減少により,その割合には顕著な低下が認められる。その一方,高齢化に伴う弁の変性やカテーテル挿入,人工弁置換,透析シャントからの菌血症由来といった医原的原因が多勢を占めるようになってきている。本邦では依然数は少ないが,欧米では覚醒剤などの違法薬物を静脈注射することで発症する右心系のIEは,若者に決してまれではない病態である。
IEは過去においては致死的な病態であったが,最近は心エコーの発展もあり,診断技術が非常に高まったことで,適切な診断までの期間が短くなっている傾向がある。ただし,それとは裏腹に,絶対にIEを見逃してはいけないという観念からか,IEの可能性がさほど高くない症例でも完全に除外できないという方針のもと,不必要な抗菌薬を長期間投与されてしまっているという皮肉な現象が生じている。また,先述のように診断技術および治療方法が進歩しているにもかかわらず,発症率および致死率がこの30年間において変化していない1),という事実も直視する必要がある。
本稿ではIEマネジメントにおける重要なポイントを,臨床研究データおよび主要なガイドラインを中心に論じる。
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