特集 緩和ケア
2.ホスピタリストが把握しておくべき疼痛の評価と治療:総論—「痛み」は「トータルペイン」と考える
蔵本 浩一
1
Koichi KURAMOTO
1
1亀田総合病院 疼痛・緩和ケア科
pp.887-899
発行日 2014年12月1日
Published Date 2014/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3103900301
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臨床現場において,痛みは最も多い徴候とされている。高度の痛みは患者に苦痛のみならず,恐怖や絶望を抱かせる。一方で,患者は痛みを感じていたとしても,自発的にそれを訴えることは少ない傾向にある1)。さらに,医療者の誤った思い込み,例えば,痛みとは1つの症状にすぎず有害なものではない,鎮痛処置をしてしまうと診断が難しくなる,オピオイドを使用すると中毒になる,などは,疼痛管理を不十分なものとし,患者の苦痛を遷延させる2)。
2000年,米国連邦議会は「痛みの10年」宣言(the Decade of Pain Control and Research)を採択し,翌2001年より,痛みをめぐるさまざまな問題への国家を挙げた取り組みを開始した3)*1。これに合わせて同年,JCAHO*2は「血圧,脈拍,呼吸数,体温」という古典的なバイタルサインと同様に,「痛み」を“第5の”バイタルサインとして位置づけ,すべての患者において痛みを評価することを“義務”づけた4)。「痛みの治療を受けることは患者の権利であり,痛みの治療をすることは医療者の義務である」,これが当時のJCAHOが定めた痛みの治療基準の基本理念である。
本稿では,第5のバイタルサインである「痛み」に関して,その定義,評価,急性痛と慢性痛の違い,がん性疼痛/非がん性疼痛への対応の違い,患者教育の重要性に焦点をあてながら,臨床現場で実際に疼痛マネジメントに携わるうえでのポイントについて述べる。
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