特集 どうする? PCAS
発作定義を満たしていない脳波異常に抗発作薬を投与するvs.しない
❽ Con:投与しない—明確な治療の有効性が示されていない以上,明らかな副作用を重視するべきである
岡崎 哲ロバート
1
OKAZAKI, Satoru Robert
1
1亀田総合病院 集中治療科
キーワード:
critical care EEG
,
seizure
,
ictal-interictal continuum
,
IIC
,
TELSTAR試験
Keyword:
critical care EEG
,
seizure
,
ictal-interictal continuum
,
IIC
,
TELSTAR試験
pp.573-577
発行日 2024年10月1日
Published Date 2024/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102201217
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はじめに
米国臨床神経生理学会(ACNS*1)は,重症患者に対する脳波検査での発作(seizure)やてんかん重積状態の定義を明確化し,ictal-interictal continuum(IIC)という概念を定義した。IICは発作には該当しないが,これまでの研究から脳の代謝亢進や二次性脳損傷と相関することが示されている。しかしながら,その対応方法はいまだ確立されていない。
2022年に報告されたTELSTAR試験は,心肺蘇生後に昏睡状態が継続し持続脳波モニタリング(cEEG)で異常脳波を認めた患者に対して,抗発作薬治療群と非治療群を比較した初の無作為化比較試験(RCT)である。神経学的予後に有意差が認められなかっただけでなく,治療群ではICU滞在期間や人工呼吸器装着時間が延長し,副作用が増加する結果となった。本研究は,いくつかの限界はあるものの,抗発作薬の有害性が治療効果を上回る可能性を示唆している。
明確なコンセンサスがないことや有害性が上回る可能性を示唆するエビデンスがあることから,実臨床においては,IICを含めた異常脳波への治療はseizureの診断基準を満たす場合に限り治療開始を考慮することが現実的である。神経集中治療の分野はいまだ発展途上であり,今後の臨床研究により治療の有効性が明らかにされる可能性がある。治療が有効な患者集団の同定や,副作用を最小限に抑える治療最適化が今後の課題であろう。
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